2024年の元旦に発生した大きな地震。住宅が地震によって損傷・倒壊する映像を見て、自分の住まいは地震に耐えられるのかどうか不安に感じた方も少なくはないでしょう。
しかし耐震リフォームは費用もかかりそうだし、まず何から始めたらいいのかいまいちピンとこないという方も。

そこで今回は、地震に強い家をつくる「耐震リフォーム」の基礎知識を解説します。
耐震リフォームのメリットや判断基準、工事の種類、費用、リフォームの流れなど詳しく解説するので、安心して暮らしたいと思っている方はぜひチェックしてください。

 

 

目 次

耐震リフォームとは

今お住まいの家が古かったり耐震性が低かったりする場合、「建て替えるしかないのかな?」と思われるかもしれません。ところが建て替えなくても、リフォームするだけで地震に強い家をつくれる場合があります。それが耐震リフォームです。
家の中で弱点になっている部分を見つけて、その部分を強化することで、大きな地震がきても倒壊しないような強い建物につくりかえます。

 

 

耐震リフォームのメリット

耐震リフォームのメリットは、大きな地震にあったとき、小さい被害で抑えられるようになること。「家が崩壊して人命が危険にさらされる」「そのあと住めないほど家が壊れてしまう」などの大きな被害を防ぎ、最小限の修繕で住みつづけられるようにします。
家が壊れないということは、地震後に「在宅避難」ができるというメリットも。
子供・高齢者・病気や障害がある・ペットがいるご家庭など、避難所での生活に不安がある場合は、特に耐震リフォームの検討をおすすめします。
そして結果的に地震にあわなかったとしても、災害に備えることで安心して暮らせるという大きなメリットがあります。耐震性を上げれば、それだけ住まいの資産価値もアップ。次世代に受け継ぎながら、長く住むこともできます。

 

 

耐震リフォームをするべきか見極める方法

日本では大きな地震が起きるたびに、建築基準法の耐震基準が見直されています。

 

  • 旧耐震基準(1981年5月まで)  :震度5強程度の中地震に耐えられる強さ
  • 新耐震基準(1981年6月から)  :震度6強程度の大地震に耐えられる強さ
  • 2000年基準(2000年6月から):新耐震基準+新たな規定が追加

建築確認申請が1981年5月までに行われた家は、旧耐震基準で建てられているので要注意。耐震診断を受けて、住まいの現状を確認しましょう。
1981年6月以降の建物は新耐震基準ですが、2000年5月までの建物は注意が必要。2000年には「接合部を金物で補強する」「耐力壁のバランスを検証する」といった大切な規定が追加されており、それ以前の建物は耐震性能が不足している場合があります。
また新しい建物でも、過去に大地震・浸水などの災害にあった場合、深刻なダメージを受けていることも。一度耐震診断を受けてみることをおすすめします。

 

 

耐震リフォームの代表的な種類

耐震リフォームと一口にいってもさまざまな工事内容があり、お住まいの弱点や予算に合わせて組み合わせながら実施します。ここでは代表的なものを紹介しましょう。

 

劣化した部材を補修する

すべての耐震リフォームで優先的に行いたいのが、劣化している部材を補修すること。土台や柱などが腐食していたり、シロアリ被害を受けてボロボロになっていたりしたら、交換します。

 

耐力壁を追加する

耐力壁とは、地震の揺れに抵抗する力をもっている壁のこと。普通の間仕切り壁に、筋交いや構造用合板などを設置することで、耐力壁を増やすことができます。耐力壁はただ増やすのではなく、建物全体でバランスよく配置することも大切です。

 

接合部を金物補強する

柱や筋交いといった部材自体がいくら強くても、そのつなぎめが外れてしまうと危険。
そのため「柱と梁の間」「土台と柱の間」など大事なつなぎめを金物で固定すると、地震に強くなります。

 

基礎を補強する

基礎とは、建物に加わった力を地盤に伝える大切な部分。コンクリートに大きなひび割れがあれば、樹脂などで補修します。古い住宅では鉄筋が入っていない無筋基礎が使われていることも多いので、隣に鉄筋コンクリートを増し打ちして強くすることもあります。

 

床面を補強する

建物に加わった地震力は、水平構面(屋根面や2階床面)をとおって耐力壁へと伝わります。水平構面が弱いと力が均等に伝わらず、一部の耐力壁だけに力が集中することに。
特に大スパンや吹き抜けのある家は、2階の床面を強くしておく必要があるので、構造用合板を張るなどして補強することがあります。

 

建物を軽量化する

瓦屋根など重たい屋根が家にのっていると、重心が上がって揺れやすくなります。そのためスレート屋根や金属屋根などの軽い屋根に葺き替えると、重心が下がって耐震性がアップします。

 

 

耐震リフォームにかかる費用

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合のデータによると、耐震リフォームの平均費用はおよそ168万円。築年数が古いほど、住宅の床面積が大きいほど、金額は上がります。

 

【耐震補強工事の平均施工金額】

  • 新耐震基準 :152万4,351円
  • 旧耐震基準 :189万0,315円
  • 全体    :167万6,637円

出典:木耐協調査データ 令和元年10月発表

耐震リフォームの流れ

耐震リフォームを検討している方は、次のような流れで進めていきましょう。

 

耐震診断

まずはプロによる耐震診断を受けましょう。現地調査や図面をもとに、ご自宅がどのくらい地震に強いのか、弱点はどこなのかを評価してもらいます。

 

耐震補強計画・設計

耐震診断の結果をもとに、弱点を補強するためのリフォームの計画を立てます。工事内容や見積もりに納得できたら、リフォーム会社と契約。スケジュールを調整して、工事へと移ります。

 

耐震補強工事

家の外から筋交いをつけるなど部分的なリフォームなら、家に住みながら工事ができることも。しかし建物全体を補強するような大規模な工事では、仮住まいが必要になることもあります。仮住まいが必要かどうかは、リフォーム会社にたずねてみましょう。

 

 

耐震リフォームで安心の住まいをつくろう

旧耐震基準の家だけでなく、新耐震基準の家であっても念のために耐震診断を受ける方も。
今の家の地震への強さを知るだけでも安心につながったり、リフォームすべきかどうかを検討しやすくなったりするでしょう。
「自分の家は大丈夫なんだろうか」と不安な気持ちが少しでもあるなら、気軽に耐震診断を受けてみるのはいかがでしょうか。

建物全体を耐震補強することもありますが、建物によってはそこまで大掛かりな工事をせず、部分的な補強のみでぐっと安全度が高まるケースもあります。
事前の対策で安心の住まいをつくっておきましょう。