近年、SDGsなど環境問題に関するワードを頻繁に耳にするようになりましたが、そのような状況下で徐々に注目を浴び始めているのが「スマートハウス」です。
実は家庭から発生するCO2の量は意外に多く、省エネを意識した住居づくりは環境問題の対策として非常に効果的です。
ただ、スマートハウスのことをまだよく知らないという方も決して少なくありません。
今回はリフォームを検討している方のために、スマートハウスやHEMS(ヘムス)※について詳しく解説していきます。
※Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)の略
スマートハウスとは
そもそも「スマートハウス」とはどのような住居を指すのでしょうか?
日本ではまだ一般化しているとは言い難いですが、もともとはアメリカで生まれたワードであり、社会ニーズの段階的な変化に応じて、徐々に知名度が上がってきています。
スマートハウスを一言で簡潔に表すと、家庭内でエネルギーを生み出し、制御し、消費する住居のことです。
具体的には、ソーラーパネルや蓄電池などのホームオートメーションを搭載した住居で、ほぼ同じ意味合いを持つインテリジェントハウスやIoT※住宅も、スマートハウスに含まれます。
※Internet of Things(インターネット オブ シングズ)の略
スマートホームとの違い
勘違いされることも多いですが、スマートハウスとよく似た言葉に「スマートホーム」があります。
スマートハウスとは意味合いが異なり、IoTやAI技術を導入し、従来より快適な生活を実現した住居のことを指します。
例えば、テレビや照明、エアコンなどをスマートフォンと連携できるスマート家電にすることで、遠隔で操作することが可能になっている住居のことです。
利便性はもちろん、防犯性や省エネという側面でも、年々注目度が高まっています。
スマートハウスに必要な3つのシステム
スマートハウスについて、より詳しく解説していきます。
まず、一般的にスマートハウスには以下の3つのシステムが必要だということを理解しておきましょう。
- 発電システム
- 蓄電システム
- エネルギー管理システム
発電システム
スマートハウスにとって重要な要素の一つが発電システムです。
住居内でエネルギーを生産するための機能ですが、一般的にはソーラーパネルによる太陽光発電を活用します。
また、エネファーム(家庭用燃料電池)が導入されるケースも多いです。
水の電気分解を利用したシステムで、ガスから取り出した水素を空気中の酸素と反応させ、発電することができます。
蓄電システム
次に挙げられるのが、生み出したエネルギーを蓄えておく、蓄電システムです。
代表的なのは家庭用蓄電池で、ソーラーパネルとも連動することができます。
発電時に使い切れなかった電気を蓄えておくことで、停電や災害などで電気が使えない非常時でも活用できます。
また、年々普及率が高まっている電気自動車やプラグインハイブリッドカーも電気の供給ができることから、蓄電システムに含まれます。
エネルギー管理システム
3つ目に必要になるのは、エネルギー管理システムです。
他の2つのシステムによって生み出し、蓄えたエネルギーを管理することで、消費効率を向上させ、高い省エネ効果をもたらします。
その中にはスマート家電も含まれるため、スマートホームもスマートハウスの一環だと言えます。
そして、そのようなエネルギー管理システムに欠かせないのがHEMSです。
スマートハウスに欠かせないHEMSとは
HEMSとは、家電や電気設備と連動して自動制御するシステムのことです。
モニターによって、一つひとつの設備がどれほどの電気・ガスを消費しているかを視覚化し、効率的なエネルギー運用を可能とします。
また、HEMSは個人の住居に留まらず、環境問題に対する取り組みとしても高く評価されています。
省エネによって温室効果ガスの排出量削減にも効果があることから、政府も導入を推奨しています。
スマートハウスのメリット
スマートハウスのメリットとしては、以下の項目が挙げられます。
- 電気代を削減できる
- 余った電気を売却できる
- エネルギーの「見える化」ができる
- CO2削減に貢献できる
- 災害時に電気を活用できる
一つひとつのメリットについて、より詳しく解説していきます。
電気代を削減できる
スマートハウス最大のメリットは、やはり電気代を削減できるという点です。
全ての家庭で実現できるとは限りませんが、十分な設備を整えることで、月々の電気代を0円にできるケースもあります。
この場合、1ヶ月の電気代が1万円だと仮定すると、1年で12万円、10年で120万円もの節約になります。
また、日本では2035年までにガソリン車の完全な生産終了を目指しています。
つまり、電気自動車やプラグインハイブリッドカーの普及率がさらに高まるということになりますが、自動車の燃料も電気で賄えることになれば、ガソリン代の節約にも繋がります。
余った電気を売却できる
スマートハウスによって、消費量だけでなく、蓄電量としても十分なエネルギーを生み出せる場合には、余った電気を売却することができます。
ちなみに、発電量は地域や季節だけでなく、もともとのソーラーパネルの容量でも異なります。
現金化することはもちろん、売却先の電力会社によっては、別のサービスや商品と交換することも可能です。
ただ、会社によって買取金額の単価も異なるという点に注意しましょう。
エネルギーの「見える化」ができる
HEMSの導入により、電気やガスといったエネルギー消費量の「見える化」が実現します。
各電気設備がどれだけエネルギーを消費しているかをリアルタイムで観測することで、どこに無駄が生まれているか特定し、改善に繋げることができます。
一般的にはモニターが付属したスマートメーターと、遠隔での観測と操作を可能にする通信システムがセットで設置されます。
それによって電力会社の対応もスムーズになり、停電などのトラブルが発生した時も素早く復旧できるようになります。
CO2削減に貢献できる
- エアコン
- 給湯
- 電化製品
- 照明
- 自動車
上記のように、家庭のいたるところからCO2は発生しています。
これは地球全体のCO2排出量の中でも高い割合を占めているため、スマートハウスの導入は環境問題対策に大きく貢献できると言えるでしょう。
また、経済産業省のエネルギー白書※によると、家庭部門のエネルギー消費量は徐々に減少してきています。
国民の省エネ意識の高まりが理由として挙げられていますが、技術の進化に伴い、今後さらにスマートハウスの普及率は高まっていくと考えられます。
※経済産業省「エネルギー白書2022」:https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/pdf/
災害時に電気を活用できる
家庭用蓄電池を始めとした蓄電システムによって、余った電気は溜めておくことができますが、高い効果を発揮するケースの一つが災害時です。
長時間停電が続くというような状況でも、独立している蓄電池があれば、電気を使用することができます。
また、家族の身を守ることにも繋がります。特に在宅療養をしている方の場合、停電状態が続くと医療機器のバッテリーが切れてしまう恐れもありますが、スマートハウスなら一時的な対策として十分な効果を発揮します。
スマートハウスのリフォームに必要な費用
リフォームによってスマートハウスを実現する際にかかる費用について解説していきます。
- ソーラーパネルの導入費用
- 家庭用蓄電池の導入費用
- HEMSの導入費用
以上の3点に分けて、具体的に解説していきます。
ソーラーパネルの導入リフォーム費用
東京都では2025年4月以降、新築建物にはソーラーパネルの設置が義務化されることが既に決定していますが、設置費用はソーラーパネルの電気容量によって異なります。
やはり電気容量が大きい方が発電量が大きくなりますが、その分高額になってしまいます。
費用相場は年々下がってきていますが、現在は1kWあたりおよそ30万円前後。
一般家庭用のソーラーパネルの電気容量はおよそ3〜5kWなので、およそ80万円〜の費用がかかることになります。
家庭用蓄電池の導入リフォーム費用
家庭用蓄電池もサイズや容量は様々で、それに応じて価格も変わります。
ただ、スマートハウスに導入する場合はソーラーパネルと連動することが前提となるため、ソーラーパネルのサイズに合わせて選ぶことをおすすめします。
一般家庭では10kWh以下の比較的小型なタイプが人気ですが、費用相場は100万円程度~です。
工事費用も含まれるため、業者によって少なからず差が生まれるということを理解しておきましょう。
HEMSの導入リフォーム費用
消費電力量を管理するHEMSの導入費用はおよそ15万円~です。
ソーラーパネルや家庭用蓄電池に比べれば安価ですが、別途HEMSに対応した電化製品や電気設備を導入しなければ効果を発揮することはできません。
以上の点を踏まえると、スマートハウスにリフォームする費用は総額で200万円程度~必要になります。
長期的に活用することで、元を取ることは可能ですが、多額の初期費用がかかります。
補助金を活用して賢くリフォーム
現在はまだまだ普及し始めたばかりのスマートハウスですが、さらなる技術の発展や、環境問題に対する意識の高まりにより、今後さらに増えていくことでしょう。
長く使用すればするほど、節約効果は高まるので、今のうちから早めに導入を検討することをおすすめします。
ただ、コストは決して安くないので、リフォームを行う際は助成金や補助金を積極的に活用しましょう。
以下のページで詳しく解説しているので、良ければ合わせてご覧ください。