地震大国である日本において、住居の耐震性は非常に重要です。
築年数が古い住居などは、大きな地震が発生した時に備えて、耐震リフォームを行っておくことが望ましいでしょう。
ただし、住居によって適切な耐震リフォームの内容は異なり、それによって費用も増減します。
今回のコラムで耐震リフォームの必要性や費用相場について解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
耐震リフォームの種類・費用
一般的には耐震リフォームと一括りに認識されることが多いですが、実際は以下の3種類に分類されることが多いです。
- 耐震リフォーム
- 制震リフォーム
- 免震リフォーム
それぞれリフォーム内容や費用が異なるため、一つひとつ解説いたします。
耐震リフォーム
耐震リフォームとは、文字通り地震に対する耐久性を高めるリフォームのことを指します。
具体的には、筋交い・構造用合板・接合金物などを使用し、壁や床など、住居の基盤を補強します。
地震対策としては最もメジャーなリフォームですが、規模によって費用は大きく異なります。
例えば、筋交いや構造用合板を数カ所設置する程度であれば、50万円前後で可能な場合もありますが、床や天井など住居全体の耐震性を向上させるためには数百万円かかるケースも珍しくありません。
制震リフォーム
制震リフォームは揺れに耐えるのではなく、揺れを抑えることを目的としたリフォームです。
特殊なゴムを使用した制震ダンパーを柱などの骨組みに装着することで、振動を熱エネルギーとして空気中に分散させ、住居が受けるダメージを緩和することができます。
一度壁を解体してからダンパーを埋め込むため、設置費用だけでなく、復旧費用も必要になります。
免震リフォーム
免震リフォームはアイソレータと呼ばれる免震装置を、住居の土台と地盤の間に挟みこむリフォームで、住居に伝わる揺れを吸収します。
3種類の中で最も効果が高く、住居の倒壊はもちろん、屋内の家具の転倒を防ぐ効果もあります。
ただし、その分大がかりな工事が必要になり、費用相場は数百万円となります。
耐震リフォームが必要な住居の特徴
次に制震・免震を含め、耐震リフォームが必要な住居の特徴を解説いたします。
以下の条件に一つでも当てはまる場合は、耐震リフォームを検討してみてください。
- 築年数が古い
- 地盤が緩い
- 構造が不安定
- 大きな地震に遭っている
築年数が古い
どのような住居であっても、築年数の経過に伴い、徐々に住居は劣化し、耐震性も下がっていきます。
特に日本家屋に多い木造住宅は、鉄筋住宅よりもともとの耐震性が劣っているので、耐震リフォームによって補強することが望ましいでしょう。
1981年に建築基準法が改正された際、耐震基準もそれ以前より厳しくなっています。
つまり、1981年以前に建てられた住居は劣化が進行しているだけでなく、現在の耐震基準を満たしていない可能性があるということになります。
地盤が緩い
住居そのものだけでなく、地盤の硬さも耐震性に影響します。
建築の際、ボーリング調査によってその土地の地盤強度が問題ないか確認されていますが、どうしても土地によって硬度には差があります。
地盤が緩い場合、それだけで地震に対する耐久性が落ちてしまうため、別途住居の耐震性を補強することが望ましいです。
構造が不安定
住居の構造も耐震性に大きく影響します。
例えば、壁や柱といった支えが少なかったり、重心が偏っている構造の住居は耐震性が低くなる傾向にありますが、具体的には以下のような構造が当てはまります。
- 窓が多い
- 1階にガレージがある
- 1階より2階の面積が大きい
- 凹凸が多い形状をしている
- 吹き抜けがある
反対に、構造がシンプルな住居ほど地震に強くなります。
そのため、既存の構造を補強するだけでなく、壁や柱を増設することも地震対策としては有効です。
大きな地震に遭っている
一度でも地震に遭っている住居は、ダメージも蓄積されている可能性が高くなります。
耐震診断によって住居の耐震性を確認し、結果に応じて耐震リフォームを行うことが望ましいです。
耐震リフォームは補助金を活用できる?
各自治体に応じて、耐震リフォームを対象とした補助金が支給されています。
適用条件や支給金額は異なりますが、リフォーム費用だけでなく、事前に行った耐震診断などの費用も含まれる場合があります。
まずはご自身の自治体で補助金制度がないか確認し、それに基づきリフォーム計画を立てましょう。
耐震リフォーム減税とは
耐震リフォームを行う際は、補助金だけでなく減税制度もチェックしておきましょう。
主に所得税の控除と固定資産税の控除の2種類があります(2022年9月時点)。
所得税の特別控除
- 対象:昭和56年5月31日以前に建築された住宅
- 控除額:耐震リフォーム費用(250万円まで)の10%
- 期間:令和5年12月31日まで
建築基準法の改正以前の、旧耐震基準の住宅を対象とした減税制度で、控除額の分が還付金として返還されます。
控除額の上限は250万円の10%、つまり25万円と決まっており、耐震リフォームのみを対象にした控除額です。
バリアフリーリフォームや断熱リフォームなど、別のリフォームを対象とした補助金と併用できるため、控除額はさらに増える可能性もあります。
固定資産税の特別控除
- 対象:昭和57年1月1日以前に建築された住宅
- 控除額:翌年度分の固定資産税の1/2
- 期間:令和6年3月31日まで
厳密な条件は異なりますが、固定資産税も所得税のように旧耐震基準の住宅を対象とした減税制度です。
条件の一つはリフォーム費用が50万円を超えているということで、リフォームを行った翌年に支払う固定資産税が半額になります。
詳しくは、国土交通省ホームページをご確認ください。
耐震診断とは
耐震診断とは、文字通り住居の耐震性を測る診断であり、旧耐震基準で建てられた住居が、現在の新耐震基準を満たすかどうかを診断します。
ただ、新耐震基準で建てられた住居に関しても、劣化によって新築時より耐震性が下がっている可能性があるため、耐震診断は有効です。
耐震診断の評価点
耐震診断では、震度6強から震度7の大地震に遭った際、その住居が倒壊してしまう可能性を4段階の評価点で表します。
- 0.7:倒壊する可能性が高い
- 0.7以上~1.0未満:倒壊する可能性がある
- 1.0以上~1.5未満:一応倒壊しない
- 1.5以上:倒壊しない
1981年以降の新耐震基準では、建築物は全て1.0以上の評価になるよう義務付けられています。
また、耐震リフォームを行う際も、この耐震診断で1.0以上を獲得できるようリフォーム計画を立てます。
耐震診断にかかる費用
一概に耐震診断といっても、住居の構造によって診断方法は異なります。
また、診断にも段階があり、それによって精密さや費用が変わります。
木造住宅の耐震診断
- 一般診断法:目視にて診断する
- 精密診断法:一部の壁などを解体して診断する
木造住宅の場合、上記のように一般診断法か精密診断法が用いられます。
一般診断法は10万円程度~で依頼することができますが、精密診断法は壁の解体・復旧が必要になる分、費用も高くなり30万円程度~となります。
非木造住宅の耐震診断
- 一次診断法:現地調査を行わず、柱や壁の断面積から診断する
- 二次診断法:さらに鉄筋の影響も考慮して診断する
- 三次診断法:さらに梁の影響も考慮して診断する
一方で、鉄筋コンクリート造や鉄骨造のような非木造住宅の耐震診断はこのように分かれており、一次から三次にかけて順番に精密さが増していきます。
一次診断法は図面のみで診断できるため、手軽に行うことができますが、その結果だけでは耐震リフォームの設計を行うことはできません。
反対に、三次診断法は高層ビルのような特殊な建築物を対象とした診断法であるため、一般住宅の耐震リフォームでは二次診断法が適切です。
鉄筋コンクリート造と鉄骨造で必要になる費用が異なり、それぞれの相場は以下のようになっています。
- 鉄筋コンクリート造:1,000円程度~/㎡
- 鉄骨造:1,500円程度~/㎡
耐震リフォームで長く住める家に
耐震リフォームと聞くと、壁や柱を補強する工事を思い浮かべる方が多いですが、補強材には様々な種類があり、それ以外のリフォームも考えられます。
また、耐震のほか、制震リフォームや免震リフォームもあり、複数を併用することも可能です。
その分費用は高くなってしまうものの、住居の耐震性は一層向上します。
日本ではいつどこで大地震が発生してもおかしくありません。まずは耐震診断を行い、早めにリフォームを検討しましょう。
補助金の活用も含め、専門的な知識が必要になる場面も多いため、「わが家のマイスター」まで気軽にご相談ください。